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心地いい風が吹く、まちの憩いの場。こだわりのコーヒーと、種類豊富な焼き菓子の店「531 Coffee&Bake」

こんにちは。『南伊豆新聞』編集部の多田です。

私は南伊豆に3ヶ月滞在しながら、このまちの魅力を発信する、編集プログラムに参加しています。

詳しい自己紹介は、よろしければこちらの記事をご覧ください。
私の南伊豆留職日記vol.01:タダ サチノ【ローカル編集者としてやってきました】

今回の記事は、私が滞在中に出会った “気になる人” を訪ねていくインタビュー企画です。

海と山に囲まれた南伊豆で暮らす人々。

あなたは「普段どんなことをしているの?」「このまちのすきなところは?」など。

インタビューを通して、南伊豆の新たな魅力が見えてくるかもしれません。

今回お話を伺ったのは、カフェ「531 Coffee&Bake(以下:531)」のオーナー 森 朝子(モリ トモコ)さん。

朝子さん:「こんにちは。今日も来てくれてありがとう」。

いつ行っても笑顔で出迎えてくれる朝子さん。

私にとって、トモさんとの会話も531に行く楽しみのひとつです。

531は下賀茂商店街から一本奥の遊歩道を通り、マックスバリュー下賀茂店から1分ほど歩くと見えてきます。

店内に描かれているのは、531のマフィンをイメージしたPOPなイラスト。

外にはペットも利用できる、開放的なテラス席があります。

531のコーヒーは「FAIR BEANS COFFEE(フェア ビーンズコーヒー)」と「RED POISON COFFEE(レッド ポイズンコーヒー)」の合計6種類の豆から選ぶことができます。

トモさん:「バランスのいいブレンドコーヒーがメニューにあったら、つい頼みたくなっちゃうと思うんです。でも、あえてブレンドコーヒーはメニューにいれず、何種類かの豆を用意しています。体調や気分に合わせてコーヒーを選べるって楽しいなと思って」。

トモさんによると、コーヒー豆によってコールドドリンクに相性がいいものや、ミルクに合うものなどそれぞれ特徴が異なるそう。どれにしようか迷ったら、トモさんに聞いてみるのもおすすめです。

コーヒーと合わせてよく出るのが、日替わりの焼き菓子。毎日5種類ほど店頭に並んでいます。

国産小麦を使っていたり、地元の農家さんの果物を使っていたり。サイズ感や形まで、一つひとつの焼き菓子に物語があるのも、トモさんのこだわりです。

トモさん:「焼き菓子は、私がこれまで出会ったお菓子の中で『好きだな』と思えるものをアレンジしたんです。あとはコーヒーと相性がいいものをお菓子にしています」。

コーヒー以外のドリンクメニューも豊富な531。

ホットチャイやスムージーなどに加えて、期間限定のドリンクメニューも販売しています。

トモさん:「来てくれる人が、どうしたら喜んでくれるかを考えていたら、ドリンクメニューもだんだん増えていきました。桜の時期は、観光のお客さんもいらっしゃるので、南伊豆のいちごを使ってスムージーにしたら好評で。日々試行錯誤ってかんじです」。

ここでコーヒーを飲んでいると、お客さん同士で世間話が始まったり、一人で来た人がテラス席でペットとくつろいでいたり。531は、まちの憩いの場になっています。

とはいえ、もともと東京出身だったトモさん。

どうしてこのまちで、カフェを開こうと思ったのだろう。

今回は、お店を開こうと思った背景や、南伊豆に移住した理由、531で大切にしていることについてお話を伺いました。

いつか自分のお店を持つことが夢だった

トモさん:「もともと、両親が飲食店をやっていたんです。その背中を見て育った影響はあるかもしれないなぁ・・・。だけど、これといって大きなきっかけがあったわけじゃないんですよ。でも、東京に住んでいた頃から、いつか自分のお店を持つことが夢だったの」。

幼いころから、人と話すことが好きだったというトモさん。

お店を出すことに憧れはあったものの、当分先のことだと思っていた。

そんなときに、移住について考え始めたそうだ。

トモさん:「こっちに移住した理由のひとつが、昔から海の近くに住みたかったからなんです。旦那さんも私もサーフィンが好きだったんですよ」。

トモさん:「もうひとつは子育てを考えたときに、自分は都会よりも田舎がいいかなと思って。長男が幼稚園に入園するタイミングでこっちに来たんです」。

南伊豆に移住してから数年は、子育てに専念していたトモさん。当時、家でよく焼き菓子を焼いていたそうだ。

その頃、南伊豆のメイン通り「下賀茂商店街」で一軒の古民家を見つける。

2015年、トモさんは友人とランチ営業メインのカフェ「TeeDa(ティーダ)」を始めた。

初めてのカフェ開業。大変なことはなかったのだろうか。

トモさん:「実は、1店舗目は3年やってくじけちゃったの。でもそれはお店を2度とやりたくないとかではなくて」。

トモさん:「キッチンに立っていると、お客さんの顔が直接見えなかったんです。お昼のピーク時に料理を必死で作って、急いで提供するっていうスタイルが自分の理想とは少し違うなと感じて・・・」。

それからトモさんはお店をたたみ、休息期間を設けた。

トモさん:「あの頃は休んでいたけど、それでも『早くお店に立ちたいな』って思うから不思議だった。家にいても、コーヒーを淹れたり、焼き菓子を焼いたりしちゃうの。いっぱい焼けたから、誰かに食べてほしくて、周りに配っていたなぁ」。

表情が見える距離感で

2019年のこと。縁あってトモさんは、当時下賀茂商店街の近くにあった「Bar Avanti(アバンティ)」を、間借りさせてもらった。そこで、2度目のカフェ営業を始める。

トモさんは、あらためて人の顔が見える距離感に、楽しさとやりがいを感じたという。

トモさん:「私にとって、カフェを通して見たい景色は、人が喜んでくれていること。そんな表情を直接見ることだったんです。だから、もう少しコンパクトで、お客さんの表情が見れるサイズ感のお店にしたいなと思って」。

トモさんはそれから3年かけて、自宅の敷地を使ってお店の準備にとりかかった。

そして2021年9月、現在の531が出来上がった。ここに至るまでに、8年という物語が詰まっている。

自分のお店は、まちの人への恩返しの場

トモさん:「わたしを助けてくれたまちの人たちに恩返しがしたいなって思っているんです。友だちもいない状態で移住したけれど、誰もいやな顔せず話しかけてくれて。お店を始めてからも、みんな遊びにきてくれて。感謝でしかないんですよ」。

トモさん:「モノを売っておいて、恩返しっていうのもあれだけど、お客さんがまた来たいと思える心地いい場をつくりたいと思っています。今のお客さんとの距離感だったり、このスタイルは継続していきたいな。ゆくゆくは、もう少し早い時間帯からお店を開けて、散歩している人たちがゆっくりできるカフェにしていきたいです」。

最後に、トモさんにとって「南伊豆の好きなところはなんですか?」と尋ねてみた。

トモさん:「のんびりしているところですね。自然の中にいることって幸せだなって日々思います。近くにある海は、眺めているだけで気持ちがいいし、この店から見ている風すら毎日違うなって感じます」。

「あとは、なんと言っても人が親切なことです。1人でお店をまわしていると、ときどきお客さんを待たせてしまうこともあるけど、いやな顔1つせずに待っていてくれたり『なんか手伝おうか?』って声をかけてくれる人もいて。私はこのまちで本当に人に恵まれたなっていうか、幸せものだなって思うんです」。

南伊豆町下賀茂商店街付近にある、531。

1日のはじまりに一杯のコーヒーを。小腹がすいたブランチに。

遊歩道の散歩途中、こだわりのコーヒーと焼き菓子を買いに、立ち寄ってみてはいかがですか。

オーナー トモさんの移住された経緯や、ひとつ一つのメニューに込められた想い。

お話を聞けば聞くほど、何度でも訪れたくなるカフェです。

編集部:多田 祥野

【531 Coffee&Bake】
場所:415-0303 静岡県賀茂郡南伊豆町下賀茂240−1
営業時間:10:00〜16:00
定休日:月曜日・火曜日
公式インスタグラム:@531.coffee.and.bake

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