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「ジャマイカで飲んだ時の海辺のカウンターが好きだったの」。 ゆったりワイワイ、ホッと一息つく場所『らいおんキッチン』

「おいしいコーヒーが飲めるところは?」

そう聞かれたら、僕は『らいおんキッチン』と答えている。

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下賀茂商店街の先っぽに、らいおんキッチンはある

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お店に入ると、ゆったりとしたレゲエミュージックが流れている。

この日はボブ・マーリーの『One Love』が流れていた

この日はボブ・マーリーの『One Love』が流れていた

「いらっしゃーい」と出迎えてくれたのは、オーナーの富樫(とがし)忍さん。

僕は、しのさん(以下:しのさん)と呼んでいる。

オーナーのしのさん

オーナーのしのさん

さっそく、ランチメニュー『ガパオライス』を注文。

ガパオライス(〇〇円)。

ガパオライス(800円)。

お腹を満たした後は、コーヒーをお願いした。

しのさん、今日もドレッドヘアがきまってる。

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コーヒー豆はしのさんが東京で仕入れているこだわりのもの

この日はインドネシア・アチェで生産されている『マンデリン』にした。

この他にも、チャイなどのドリンクメニューもある。

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しのさんの手作りのお菓子にもつい手が伸びる

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この日はクランベリーケーキが出来上がっていた

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しのさん:「できればウチはコーヒーとお菓子だけでやりたいの(笑)」

そんなやりとりをしながら、ゆっくりとした時間が流れる。

僕はコーヒーを飲みながら、らいおんキッチンの誕生秘話を伺った。

 

■不安すぎて、オープン日を一日伸ばした

南伊豆新聞:「らいおんキッチンの歩みを教えてください」

しのさん:「このお店は2018年2月11日の建国記念日にオープンしました」

南伊豆新聞:「その日にした理由ってあるんですか?」

しのさん:「特にこだわりがあったわけじゃないの(笑)。でも、南伊豆は2月10日から桜祭りが始まるでしょ? だからそこに合わせてオープンしようかなって。でも、大家さんに「緊張して開けられない」って電話して、一日伸ばしたの(笑)」

ちなみに桜祭りの様子。2月になると約800本の河津桜が咲き誇り、商店街にお客さんが流れる

ちなみに桜祭りの様子。2月になると約800本の河津桜が咲き誇り、商店街にお客さんが流れる

しのさん:「週初めの2月11日(日曜日)がいいだろうって、自分に理由つけてね。ビビってました(笑)」

らいおんキッチンがオープンするまでの道のりは、なんていうか一言では言えない。

しのさんの歴史をすこーし紐解くことにした。

■専業主婦から内装屋へ

しのさんは東京生まれ、埼玉育ち。高校は親戚を頼ってアメリカへ渡った。

しのさん:「私の親戚がアメリカに住んでいて、小さい頃から「おいでよ」って言われてたんです。だから自然とアメリカには行くものだと思い込んでた(笑)。大学もそのままアメリカでって考えていたけど、当時付き合っていた彼との間に子どもができたの。それを機に実家の埼玉に帰って、20歳で一児のママになりました」。

高校時代のしのさん。写真はアメリカンスクールの卒アルから

高校時代のしのさん。写真はアメリカンスクールの卒アルから

それからしのさんは、20歳から25歳まで新潟で暮らした。

しのさん:「相手の勤め先が新潟だったって理由だけどね。家族で移住しました。その時はずっと専業主婦。25歳からは東京で清掃作業のお仕事とか、エステの受付とか。働くだけ働いて、お金を貯めて離婚しました(笑)。それからは自分の力で子どもたちを食わさないといけないから、手に職をつけて職人になろうと思ったの」。

しのさんは30歳のタイミングで内装屋に就職する。

しのさん:「タウンワークで内装・補修屋さんの募集が出ていたわけですよ。で、やってみて天職だと思ったの。面白すぎて」

ちなみに、らいおんキッチンの内装はしのさんが作っている。

ちなみに、らいおんキッチンの内装は全てしのさんが作っている。

しのさんは30歳から38歳まで事務所で腕を磨き、それから独立して5年働いた。

南伊豆新聞:「すごい・・・。30歳から未経験の世界に飛び込むって、勇気がいりませんか?」

しのさん:「募集の仕方がよかったの。木目とか色を塗る仕事もあったし、美大生が多かった。DIYみたいなことが流行り始めた時だったし。やってみようと思ったんだろうね」

■おばあちゃんになっても、できる仕事を

南伊豆新聞:「すごいなぁ。子育ての両立って大変そうです。お子さん3人いたんですよね?」

しのさん:「どうだったかなぁ。朝は5時頃に現場に向かって、帰ってくるのは19時くらい。子どものご飯を作って、弁当を用意して。子どもたちは10歳、8歳、6歳くらいの時だね」

子育て奮闘中の頃。当時は4時間も寝れば十分だと思っていたそう。「あ、でも21時に子どもたちを寝かしてから飲みに行ったりもしたよ(笑)」としのさん。

子育て奮闘中の頃。当時は4時間も寝れば十分だと思っていたそう。しのさん:「あ、でもたまに子どもたちを寝かしてから飲みにも行ってたよ(笑)」

南伊豆新聞:「あれ、まだカフェの開店に繋がらないですね(笑)」

しのさん:「えっとね・・・。内装屋は楽しかったんだけど、歳を感じてくるわけですよ。おばあちゃんになったら、この仕事は続けられないなって」

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しのさん:「子どもが大きくなったら、どのみち私のもとからは離れちゃうじゃん。食わせてもらえるならそれでいいけど。1人で生きていく方法を考えたの。ヨガの先生になるとか、30代後半の時期かな。それで、1人でやっていける可能性を考えてた時に、飲食だったの」。

南伊豆新聞:「1人でやっていける可能性かぁ」

しのさん:「もともと私が子どもたちのクリスマスパーティーとかでお菓子とか料理を作ったり、人をもてなすことが好きだったのもあるかな」

南伊豆新聞:「それで30代の後半からカフェの準備を始めたんですね」

しのさん:「えっとねぇ・・・」

そう言って、しのさんがごそごそと何か取り出した。

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しのさん:「いや、実は内装屋の仕事をしながら食品衛生の資格を取ってたの。33歳の頃かなぁ。特にまだ何もしてないのに。今思えば用意周到だよね(笑)」

南伊豆新聞:「へぇ。そうだったんだ!その時から、『お店をやりたい』っていう芽があったんですね」

しのさん:「そうかもね(笑)。あとは私が33歳でジャマイカに行った時の記憶が、今ここにあるのかもしれない。そのリゾート地がすごくよかったの。わぁ、素敵だなって、絵を描いてさ。人に見せれないけど。こんなカウンターとか、こんなお店あったらいいなぁとかさ」。

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ジャマイカを訪れた時のしのさん

店内にはジャマイカの地図が

店内にはジャマイカの地図が

毎度のことながら、お店の歴史を紐解くと・・・。

店主の人生観、大切にしている風景に出会う。

そういう時、それを簡単に言葉にするのは難しいなって思う。

それから、しのさんは子どもたちが自立していったタイミングで、飲食店開店へ動き出す。

■「どうしよう」とか、言ってられなかった

しのさん:「お店を始める前は、東京のタイ料理屋で働きました。本当はおしゃれなカフェで働きたかったけど雇ってもらえなくてさ(笑)。でも、そこで経営のやり方とか学んだの」

こんな頭してたら東京とか意外と働けないんだよね(笑)

しのさん:「こんな頭してたら、東京って意外と働けないんだよね(笑)」

今のランチメニューはそこで学んだものが多いそうだ。

南伊豆新聞:「南伊豆にはどういった経緯で来たんですか?」

しのさん:「10年前から南伊豆に来ていてさ。なんて綺麗な海なんだろうって。わたし的に、東京から近くて、綺麗な海っていったら南伊豆だと思うの。もともと海が好きだったし。でも、最初はアメリカでお店を出そうって考えてたの。そしたら今のダーリンと出会ったのね(笑)。で、2人で暮らしていくなら、南伊豆だなぁって」

2019年にダーリンこと、しげさんと結婚!

2019年にダーリンこと、しげさんと結婚!

しのさんたちは2017年の4月に移住。

12月にお店の物件を決めて、2月にオープンした。

南伊豆新聞:「おぉ! 展開早いですね(笑)」

しのさん:「んータイミング? わからない。早くしないとって。この歳で無職なんて、ないじゃん? 東京の家を全部引き払ってきたんだよね。『どうしよう!』とか言ってられなかったの(笑)」

しのさんの話は、不思議とストンと肚に落ちていった。

“決めたからには、動く”っていう一択だったのか。

南伊豆新聞:「お店をやっていくなかで、これからも大切にしたいことってなんですか?」

しのさん:「『しのさーん(ちゃん)』って集まるお店でありたい。『いっぱい話したいことがある』って言ってきてくれると嬉しいじゃない。お母さんみたいなのは嬉しくないけど(笑)。ここのコーヒーを飲んで、ホッとするお店であり続けたいなぁって思う」

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らいおんキッチンは、お客さん同士でおしゃべりが始まることが多い。

しのさんは意図していないらしいけど、知らない人同士で交流が生まれている。

不思議だけど、らいおんキッチンの空間、しのさんの雰囲気がそうさせているんだろうなぁ。

そんなしのさんが淹れてくれるコーヒー、いかがですか?

【らいおんキッチン】
場所:〒415-0302 静岡県賀茂郡南伊豆町上賀茂1-3
電話:-
営業時間:7:30~17:00 (LO 16:30)
*事前に連絡を入れたらモーニングもあります
定休日:不定休
らいおんキッチンのSNSをチェックして向かうのがお勧めです
・Twitter: @lionkitchen0211
・Instagram: lionkitchenminamiizu
・Facebook: らいおんキッチン

駐車場:あり
※南伊豆新聞を見たと伝えてくれると嬉しいです!

そうそう。しのさんの日常におじゃましたいという方は、一対一のくらし体験『南伊豆くらし図鑑』もおすすめします。

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