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一年中、南国植物がお出迎え! トロピカル温泉 ポリネシヤ風呂。民宿「福屋」

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トロピカル温泉ポリネシヤ風呂は、伊豆急下田駅から車で30分。
下賀茂商店街から、徒歩15分のところにある。
植物が生い茂るガラス張りのハウスが目印だ。

ここに温泉なんてあるのだろうか・・・

ここに温泉なんてあるのだろうか・・・

ガラス張りのハウスにおじゃますると熱気でもわっとする。植えられているのは、パパイヤ、マンゴーなどの熱帯植物。

「なぜここに熱帯植物?」と思う方もいるかもしれない。

もともと南伊豆町下賀茂は温泉熱を活かした温室栽培が行われている町。この温室の中であれば、本来なら育たないはずの熱帯植物を育てることができる。

大正3年、満州鉄道総裁の豊田ショウキチさんが温室づくりを始めたのがきっかけ。それから徐々に下賀茂で広がっていったそうだ

大正3年、豊田しゅう吉さんが温室づくりを始めたのがきっかけ。それから徐々に下賀茂で広がっていったそうだ

そんな歴史が息づくまちで、ポリネシヤ風呂を営む民宿福屋。

ここには地元の人や、古くから付き合いのある旅行客が利用する、まさに知る人ぞ知る場所。

ちなみに、初めての人はどうやってお風呂に入ればいいかわからず、困惑するかもしれない。

温泉のみを利用する人はここから入る。

温泉のみを利用する人はここから入る。

突き当たりを左に進むと、「銭箱」と呼ばれる木箱を見つけることができる。

左の木箱が銭箱。そこを開けて、お金を入れるというシステム

左の木箱が銭箱。そこを開けてお金を入れる

お風呂のお金は300円。信頼で成り立っている。

もし、場所がわからなかったら、呼び鈴を鳴らすと、女将さんが出てきて案内してくれる。

ちょっぴりそっけない時もありますが、とっても優しい方。全然怒っているわけではないです。

そして、いざポリネシヤお風呂へ!

お風呂の扉を開けたとき、ライトアップされた大きな植物の存在感。

おぉぉ。。。

男湯。植物の名前はブーゲンビリア。一年中花を咲かせている

男湯。植物の名前はブーゲンビリア。一年中花を咲かせている

女湯。マンゴーの花が咲く(夏になると実がなるそう)

女湯。マンゴーの花が咲く(夏になると実がなる)

家族湯。ゴムの木が植えられている。これからパパイヤが育つそう

家族湯。ゴムの木が植えられている。これからパパイヤが育つ

熱帯植物を愛でながら温泉なんて最高だなぁと湯船に入る。

無色で塩分を多く含むのが下賀茂温泉の特徴。

血行を良くする効果があるそうで、お風呂から出た後もしばらくポカポカ。

気持ちよくお風呂からあがった後、「お風呂ごちそうさまです」と声をかけたら、「はい上がって」と女将さん。いきなり取材をすることに。(後日っていう話だったのに!)

温泉、民宿、やるつもりなかったですよ(笑)

ポリネシヤ風呂を併設する民宿福屋は昭和53年に開業。今年で37年目を迎える。

切り盛りしているのは、渡辺さん夫妻。

渡辺さんご夫婦。今年で結婚45年目。女将さんは「名前も写真も絶対だめ!」とのことだったので似顔絵で

渡辺さんご夫婦。今年で結婚45年目。女将さんは「名前も写真も絶対だめ!」とのことだったので似顔絵で

温室メロン栽培を営む家に生まれた渡辺守男さんは、生まれも育ちも南伊豆町。

小さい頃は川で魚を釣ったり、突いたりして過ごしていたそうだ。

もともと温室メロン栽培の跡取りになるつもりだったと守男さん。

中学のとき、先生からの勧めで園芸を学ぶために東京の高校へ進学。

卒業後は叔父の勧めで下賀茂に戻り、地元の下田高校分校で助手として園芸を教えた。

女将さんとはそのときに出会う。

沼津出身の女将さんは栄養士として南伊豆町で働いていた。

しかし、新しい環境に馴染めず、就職して1年半で実家の沼津に戻ったそう。

そのとき、守男さんが沼津まで追いかけたというから、なんともドラマチック!

「一目惚れなんじゃないですかね」と女将さんは笑う。

急に黙り込む守男さん。「恥ずかしい」と一言

急に黙り込む守男さん。「恥ずかしい」と一言

それから3人のお子さんに恵まれ、守男さんは実家の温室メロン栽培をやりながら、生け花の材料を作る事業も行った。

しかし、伊勢湾台風、伊豆半島沖地震、度重なる災害によって当時住んでいた家が半壊。

さらに、昭和53年の河川改修工事によって家を移すことが決まった。

これまでやってきた温室栽培などの事業に大きな影響を及ぼした。

渡辺さん夫婦にとって大きな転換期を迎えることになる。

これからどうするべきか、家族全員で話し合った結果、守男さんは温室メロン栽培をしていたお父さんの土地を引き継ぎ、家(民宿)を建てることになった。

開業当初の福屋の前。守男さんのお父さんとお母さん。二人が温室を始める前は伊豆の有名旅館で働いていたそう

開業当初の福屋の前。守男さんのお父さんとお母さん。二人が温室栽培を始める前は伊豆の有名旅館で働いていたそう

守男さんは両親の経験を活かし、民宿業へと舵を切った。

しかし、子育てに忙しかった女将さんは戸惑ったそうだ。

客商売なんてやったことないから、びっくりしましたよ。だからね、私は今でも客商売は苦手なの。人見知りだし、お世辞も言えない。できれば人と関わりたくないって思う方なの(笑)。「それはここで言っちゃダメだろう!」と守男さん。掛け合いが面白い

客商売なんてやったことないから、びっくりしましたよ。だからね、私は今でも客商売は苦手なの。人見知りだし、お世辞も言えない。できれば人と関わりたくないって思う方なの。「それはここで言っちゃダメだろう!」と守男さん

この言葉を聞いたとき、「なるほど!」とちょっと思った。

女将さんは、いわゆる「いらっしゃいませ!」というような、ハキハキとした接客が苦手な人。だから少しだけそっけなく見えただけなんだな。

女将さんの心配をよそに、民宿はバブルの波に乗って大繁盛した。

経営が軌道に乗ったタイミングで守男さんは民宿に専念。

それから守男さんは近所の人たちからの後押しで町会議員になり、20年近く南伊豆の観光誘致に力を注いだ。

守男さんはそれがきっかけで南伊豆の歴史を学ぶように。今は『南史』という南伊豆の歴史を掘りさげるプロジェクトに熱を注ぐ。でもほんとは歴史よりも植物が好き。将来は植物学者になりたかったそう

守男さんはそれがきっかけで南伊豆の歴史を学ぶように。今は『南史』という南伊豆の歴史を掘りさげるプロジェクトに熱を注ぐ。でもほんとは歴史よりも植物が好き。将来は植物学者になりたかったそう

止めどなく来るお客さん。二人は慌ただしく毎日を過ごしていた。

驚いたことに、もともと福屋は内風呂だけだった。

バブルのときにお客さんが増えすぎたため、外の温室植物を切り開いてポリネシヤ風呂はできたという。

そうでもしないとお風呂に入れない状況って・・・どれだけ人が来たんだ。

でも、バブルの波に乗っていなかったら、内風呂のみだったはず。

今のポリネシヤ風呂はなかったかもしれない。

当時の写真を振り返る守男さん。町会議員の頃、町の人から「気軽にお風呂に入れる場所を作って欲しい」という声を受けて2000年に一般の人にもポリネシヤ風呂を解放したそう

当時の写真を振り返る守男さん。町会議員の頃、町の人から「気軽にお風呂に入れる場所を作って欲しい」という声を受けて、2000年に一般の人にもポリネシヤ風呂を解放したそう

バブルがはじけると、観光客は目に見えるかたちで減っていった。

どんどん旅館と民宿は無くなっていったが、福屋は残った。

今は二人とも70歳を超えて、子どもたちも成人。

当時より客足は少なくなったが、平日でもリピーターの方が訪れるという。

「まぁもうこんな歳だし、ぼちぼちやっていけたらいいんです」と二人は言う。

「ほんと、何が転じて福になるか、わからないもんで。知らない間にこういう人生になった。でも結果的にやってよかったなぁって思います」と女将さん。「よし、これが今日の答えだね!」と守男さん

「ほんと、何が転じて福になるか、わからないもんで。知らない間にこういう人生になった。でも結果的にやってよかったなぁって思います」と女将さん。「よし、これが今日の答えだね!」と守男さん

最後に守男さんが「もし(女将さんが)栄養士じゃなかったら、民宿は考えてなかったかもしれないな」と話してくれた。

もし災害がなかったら、もし女将さんが栄養士じゃなかったら、今の福屋も、ポリネシヤ風呂もなかったかもしれない。そもそも、守男さんが沼津まで女将さんを追いかけなかったらどうなっていたんだろう。

この二人だったから、民宿福屋があり、ポリネシヤ風呂がある。

「お互い仲がいいんですよ」
「お父さんはいつも自由気まますぎて・・・仕事はいつも私ばっかり」。

インタビュー中、そんな二人の掛け合いがなんとも微笑ましかった。

二人の生きてきた時間が、このお風呂に詰まっているなぁ。

そんな二人の人生にちょっと思いを馳せながらお風呂に浸かってもよし。

もちろん純粋にお風呂に入るもよし。ぜひ、あったまりに来てください。

お風呂あがりの帰り道も、じんわりあったまりますよ。

 

【ポリネシヤ風呂 民宿福屋】
場所:〒415-0303 静岡県賀茂郡南伊豆町下賀茂462−10
電話: 0558-62-1003
営業時間:8:00~20:00(時間をしっかり守ってくださいね)
定休日:無休
料金:300円
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