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「喉ごしと香りを感じて」。打ちたてお蕎麦が食べられるお店 つかさ庵

つかさ庵は下賀茂商店街から車で10分。

一瞬通り過ぎてしまいそうになるが、小道を曲がるとすぐに見えてくる。

右にある看板が目印

右の看板が目印

この場所で18年、蕎麦屋を営んでいるのが石塚政男さんと奥さんのとよ子さん。

2人のツーショット。大将は物静かな方で、奥さんの〇〇さんはカラッとしたハキハキした方。〇〇さんが話すと〇〇さんが必ず補足を入れてくれます!

大将の政男さんは物静かな方で、とよ子さんはハキハキとした方

「ここの蕎麦の特徴? なんだろうな・・・朝に打った蕎麦がその日に食べられることかな。香りがいいんだよ」

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朝8時頃、つかさ庵の風景

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この辺はお店がなかったからね(笑)。それがよかったんだろうな

大将の石塚政男さんは、もともと千葉県出身。

自衛隊に入隊したが「自分には向いていない」と2年で退職。

上司の誘いを受けて東京でとんかつ屋を始める。

とよ子さんは南伊豆の出身。

南伊豆で幼少期を過ごした後、東京で美容師として働いていた。

ある日、2人のお店に通っていた常連さんが「いい人がいる」とお互いに声をかけてお見合いの場を設けてくれた。そこで2人は出会い、結婚。〇〇さんは美容師を辞めて、とんかつ屋を手伝うことに。

2人はご縁あって、ご結婚。とよ子さんは美容師を辞めてとんかつ屋を手伝いながら、親戚の叔父さんの蕎麦屋でパートを始める

結婚して数年後。

とよ子さんの叔父さんが体調をくずされ、

お店をたたむことになった。

その叔父さんのやっていた蕎麦屋の名前が、つかさ庵!

叔父さんの名前、鶴田松司(まつじ)さんの“司”からきている。

政男さんは、先輩と始めたとんかつ屋を辞めてつかさ庵を引き継いだ。

今のつかさ庵はここから始まっていた!

当時、政男さんは40歳。

とんかつ屋から蕎麦屋への転身。

不安はなかったんだろうか。

「いつか自分のお店を持ちたいと思っていたからね。でも、叔父さんのお店だから、そりゃトンカツじゃなくて蕎麦だろうと思ったよ。もちろん、かみさんがもともとパートで働いていたところだったし、立地も新興住宅地で人も大勢来る見込みがあった。だからなんとかなるって言い聞かせてた(笑)」

「いつか自分の店を持ちたいと思っていたからね。でも、叔父さんのお店だからそりゃトンカツじゃなくて蕎麦だろうと思ったよ。もちろん、かみさんがもともとパートで働いていたところだったし、立地も新興住宅地だから人が来る見込みもあった。だからなんとかなるって言い聞かせてたよ(笑)」

当時の写真は見つからなかったが、東京でつかさ庵をやっていた時のことを話してくれた。そのときは手打ち蕎麦ではなく、機械を使った製麺蕎麦だった。「配達もやっていたよ。毎日4000件のエリアを回っていたかな」と政男さん

写真は見つからなかったが、東京でつかさ庵をやっていたときのことを話してくれた。当時は手打ち蕎麦ではなく、機械を使った製麺蕎麦だった。「配達もやっていたよ。毎日4000件のエリアを回っていたかな」と政男さん

パートさんを雇えるほど順調だったつかさ庵。

しかし、2人はこの場所で続けていくイメージがだんだん持てなくなっていった。

2人は子育てがおわったタイミングで、南伊豆に移り住む計画を立てる。

「年を取ったら出前蕎麦はできなくなるだろうし、住宅地もどんどん人が少なくなってね。じゃあ南伊豆で家を建てて新しく始めようと思ったんだよ」

「年を取ったら出前蕎麦はできなくなるだろうし、住宅地もどんどん人が少なくなってね。じゃあ南伊豆で家を建てて新しく始めようと思ったんだよ」

政男さんは、このときから手打ち蕎麦を学び始める。

仕事の合間を縫って、東京の有名店に出向き、一から出汁の取り方や仕入れ方法を学んだそうだ。

そのとき、政男さん50歳。

チャレンジしまくっている!

「別に大したことじゃないよ」「いや、本人は言わないけどね。この人はすごく努力したのよ」と奥さん。2人のやりとりも面白い

「別に大したことじゃないよ」「いや、本人は言わないけどね。この人はすごく努力したのよ」と奥さん。2人のやりとりも面白い

そして、こちらが政男さんが打ったお蕎麦!

生粉(きこ)打ち蕎麦(10割そばとも言われる)。蕎麦の断面の角が立っているのが特徴

生粉(きこ)打ち蕎麦(10割そばとも言われる)。蕎麦の断面の角が立っているのが特徴

おつゆは、昆布と本節カツオがベースとなっている。

甘すぎず、辛すぎない、ちょうどいいバランス。

こちらは人気のメニュー「桜えびと大根のぶっかけ」。2016年にできたメニュー

こちらは人気メニュー「桜えびと大根のぶっかけ」。2016年にできたメニュー

駿河湾で獲れた桜エビの存在感がすごい。

まずはお蕎麦を一口すすり、

桜エビと、千切りされた大根をたっぷりおつゆにからませ・・・

さらに一口いただく。

サクサクと、いい音が口の中で鳴る。

さすが元とんかつ屋さん! 見事な揚げ(サクサク)加減だ。

そして、千切り大根と桜エビがなんと合うことか。

うまい!

食後に蕎麦茶を飲んで一息つく。

窓から外を眺めると、のどかな緑の風景が広がる。

お昼時は、つかさ庵のお蕎麦を求めてたくさんの人が足を運ぶ。

「無我夢中だったよ。ありがたいことにお客さんは来てくれたね。ほら、この辺はお店がなかったから(笑)。それが条件としてよかったんだろうな」

「お店を始めた頃は無我夢中だったよ。でも、ありがたいことにお客さんは来てくれたね。ほら、この辺はお店がなかったから(笑)。それが条件としてよかったんだろうな」

2人は南伊豆へ来て、何が変わったのだろう。

「機械打ちの製麺蕎麦から手打ちの蕎麦になったことかな(笑)。あとはなんだろうな、水の味も空の色も違う。夜は満点の星を見ることができる。静かで、ゆったりした感じがいいなと思う」と政男さん。

「最初は田んぼのカエルがうるさくて寝れなかったけれど・・・あっという間に気にしなくなったの(笑)。不思議ねぇ」ととよ子さん。

政男さんは照れられるかもしれないが、

40歳、50歳のタイミングで新しく学び始めるってすごいことだ。

それを支える奥さんもかっこいい。

たくさん人生が織り込まれたつかさ庵のお蕎麦をぜひとも食べに来てほしい。

【つかさ庵】
場所:〒415-0313 静岡県賀茂郡南伊豆町一色447-1
電話:0558-63-0088
営業時間:11時~14時30分 17時~19時30分 ※火は昼のみ
定休日:水、第3火曜日
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つかさ庵

 

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