はじめに、ちょっと触れておきたいことがあります。

どうして閉店、休業されるお店を掲載するのか、についてです。

僕は、お店の風景を残すことは、

これまでそのお店に来てくれた人にとって、町にとって、

きっと価値のあることだと思っています。

もちろんお店そのものは、店主さんやその家族のもの。

きっと並ならぬ思い出が詰まっているはずです。

でも、もしかしたら、その思いに引けを取らないほど、

これまで来てくれた人（お客さん）にとっても、

大事な思い出として、そのお店に思いを重ねている人がいるかもしれません。

かたちに残すことで、お店に関わってきた全ての人たちの時間が

この町に蓄積されていきます。

それは、とても価値のあることだと思うのです。

南伊豆新聞では、今、この瞬間の南伊豆の風景を丁寧に残していきたいと思っています。

それでは、今週の南伊豆新聞は「休石（やすみいし）」をご紹介します。

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「ここはすごい温泉街だったのよ。扉の向こうから下駄の音がカランコロン聞こえてきてね」。

当時の風景を語ってくれたのは、休石の店主、高野伊都美（いつみ）さん。

店主の伊都美さん。ばったり会うと、穏やかな口調で「ちゃんとご飯食べてる」と気にかけてくれる。写真は照れられたのでこの距離から

伊都美さんの料理はいつも手がこんでいて、

季節のもの、地元のものを扱った日替わり定食が絶品だ。

こちらがその日替わり定食

毎日12時になると、いつもの常連さんがここへ通う。

常連さんは裏口から入ってくる（ここが正面入り口と呼ぶ人も！）

常連さん、新しいお客さん、それぞれが席に座り、伊都美さんのランチを食べる。

それがいつもの休石の風景。

今まで来てくれた人たち、本当にありがとうね

伊都美さんは南伊豆の出身で三姉妹の次女。

昔から料理を作るのが大好きだったそう。

「母がお料理を作るのが好きでね、アイスクリームを一から作ってくれたの。その味がとっても美味しくて忘れらなくて今でも記憶に残っているのよ。それからずっとお母さんのお料理を手伝っていたかな。姉妹みんなお料理を作るのが好きなの」

なるほど。この頃から伊都美さんは料理が好きだったんだ。

伊都美さんの趣味は猫の置物を集めたり、お裁縫で人形を作ること。店内には伊都美さんの好きなものが並ぶ。

朝はその仕込みをしてからランチ営業。

それが終わったら家族のご飯を作る。

その生活を18年ほど続けていたそうだ。

オープン当初は夜も営業していたらしい。

伊都美さん・・今もそうだけど、当時からすごく働いてたんだな。

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ランチをやめようと思ったのは、スタッフでもある姪っ子さんがサポートに入れなくなったのがきっかけだ。

これからは介護施設に昼食を届ける仕事にほぼ専念するらしい。

ランチを辞められてからも、なんだか忙しそうだ。

こちらが休石の日替わり弁当！

「常連さんからは『僕が退職するまで続けるって言ったのに～』って言われちゃったけどね（笑）。申し訳ないなって思っているんだけど、もう年齢的に1人は限界かなぁって。かといって、今さら新しい人を雇いたいとは思わないの。ちょうどいいタイミングなのよ」

最後に、これまで来てくれた人たちに一言求めると。

1分くらい長い沈黙があった。

「“一言”って言ってもねぇ・・・・涙が出ちゃうから・・・。常連さんからは『今までありがとうね』って先に言われちゃったの。それが嬉しかった。なんて言ったらいいのかわからないけど、本当に本当にありがとう。今までここに通ってくれた人たちはみんないい人たちだったから、自分の中では家族みたいな感じなの。また近いうちにコーヒーを出せたらやるつもりよ」

休石のランチはもう食べられない。

もう少し落ち着いたらドリンクのみだけど、営業を再開するかもと話してくれた。

「まだわかんないけど、またその時に教えるわ♪」

もしかしたら・・・伊都美さんとそこで仲良くなったらランチを特別に振る舞ってくれる・・・かもしれません。

ちなみに、常連さんの好きなメニューが「ナポリタン」ということで、特別にナポリタンを振る舞ってくれた。

「昔ながらのナポリタンよ」と伊都美さん。具がたくさん詰まってます！

言わずもがな、、、うまい！！

これも南伊豆の風景です。

伊都美さん、片ずけでバタバタしている中、取材させていただきありがとうございました。

そして、ランチ営業30年間、疲れ様でした。

【休石＊ランチ営業が終了。そのほかのメニューも現在（2018年7月時点）お休み中】
場所：〒415-0313 静岡県賀茂郡南伊豆町下賀茂311-6
電話：0558-62-1820
営業時間：11時～14時
定休日：土日、祭日
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