その日の寿司ネタは大将がブログで毎日更新! 前原寿司 2018.6.7
カウンターのあるお寿司屋さんってすこしだけ緊張しませんか?
ちなみに、僕は緊張します。
下賀茂商店街のメイン通りにある前原寿司に対しても、それは同じでした。
でも、“取材”という名目のもと、突撃してみたんです。
・
・
・
結論から言えば、暖簾(のれん)を超えた先に
なんとも言えない世界が広がっていました。
まずは、これを見て欲しいです。
これは大将の榊原喜好さんが更新するブログ「南伊豆 前原寿司 美味しい寿司ブログ」。
その日に獲れた魚などの情報を2007年から“ほぼ毎日”更新している。
こんな最高な人が南伊豆にいるなんて!
早々にこのお店のファンになり、何度か通った。
店内はテーブル席、カウンター席がある。
もちろん勇気を出してカウンターへ。
南伊豆の老舗寿司屋、前原寿司をレポート!
知り合いからブログを勧められてね、ブログ始めちゃったよ
この日は地魚の握り(1,500円)を頼んだ。
特に金目鯛の炙りは大将のおすすめ。
火で炙ることで風味が引き出され、香ばしくなる。
金目鯛のプリプリした身は厚かったが、口の中であっという間にとけていった。
あぁー、うまい!
前原寿司は地元伊豆半島で取れた魚にこだわっている。
海が荒れた日が続くと「今日は魚が入ってないよ」と言われることも!
だから、事前にブログを一読してくるのが前原寿司のたしなみ方だ。
前原寿司の歴史は、昭和24年まで遡る。
東京、熱海で板前として働いていた大将のおじいさん鉄次郎さんが前原食堂を開業。
そこではラーメン、カツ丼、カツライス(カツカレー)、たまにお寿司を出していたそう。
本格的に寿司屋として始まったのが、昭和36年頃だ。
喜好さんが高校3年生のとき、前原寿司を継ごうと決意する。
「跡取りがいなかったしな。『しょうがなねぇ、やるか。俺がやるんだろうなぁ』ってね。それまでは包丁の名前も切り方もわからなかったよ(笑)」
喜好さんは高校卒業後、東京へ修行に行く。
それから3年間、喜好さんは割烹料理屋で料理の基礎を学んだ。
基礎を学んだ後は銀座、自由が丘のお寿司屋さんで2年間修行して南伊豆町に戻った。
喜好さんの若かりし頃の話を聞きながら、お寿司とつまみ、お酒を交互にやっていると、あるお品書きが目についた。
メロンブランデー。。。
「なにこれ大将!」
「飲めばわかるさ、ハッハハ」と意味深なことをおっしゃったので、エイ!と注文。
おぉぉぉ。
メロンがどっぷりブランデーにつかっている!
メロンとブランデーのまろやかな香りがふわっと鼻をくすぐる。
恐る恐る、飲む。
・・・うまい!ブランデーとメロンが全然喧嘩しない。
そうそう、この町は温室メロン栽培が有名な町。
昔はメロンを半分に切り、そこにブランデーを入れて食べるのが下賀茂名物だったらしい。
大将によると、採算が取れる商品じゃないので今はすっかり見かけなくなったそうだ。
「うちはこれでお金を取ろうなんて思っていないからね」と大将。
メロンがブランデーになじんでくる2、3杯目がうまいよと僕に勧めた。
最後にブランデーが染み込んだ、とろっとろのメロンを頬張る。
じゅわぁ〜と広がる。メロンとブランデー!
感無量で言葉が出てこなかった。
そして、最後は締めに貝汁を注文。
お酒のせいもありますが、一口飲むごとに「はぁぁ。しみるぅ」と唸った。
すっかり満足してお会計。
お値段は首都圏のお寿司屋さんと比べるとリーズナブルだと思う。
大将の人柄を気さくに書いてしまったけれど、基本的に大将は「美味しく寿司を食べて欲しい」というスタンスなので、お客さんにたくさん話しかけるタイプではない(もちろんお寿司の説明はしてくれます)。
でも「聞いてくださいよ大将〜」と話しかけると、たくさん話に乗ってくれる。
ぜひこの町の歴史や、お寿司に対するこだわりなどを聞いてほしい。
だって、ただ食べて帰るにはもったいないと思いません?
まだブログ、SNSが普及していないときにですよ、
当時60歳を過ぎた喜好さんが、その日に獲れた魚を毎日に更新するんですよ。
もう3400回以上は更新しているんですよ。
10年以上、顔の見えない誰かに対して、「こんな魚が獲れたよ!」と果たして何人の人ができるだろう。
マメすぎる。あと全然関係ないけど高2から付き合いはじめたという奥さんとの馴れ初めも気になる。
前原寿司は、大将の誠実かつマメな人柄と、ユーモアが見え隠れする素敵なお寿司屋さんです。
<ほぼ毎日更新!前原寿司のブログはこちら>
【前原寿司】
場所:〒415-0303 静岡県賀茂郡南伊豆町下賀茂290−3
電話:0558-62-0071
営業時間11:00~22:00
定休日:月曜日
※「南伊豆新聞を見た」と伝えてくれると嬉しいです!
ツイート