「期待を裏切れないから、それに応えたいって思うんだよね」。地元の幅広い層に愛されるイタリアン料理店「プチレストランTime」 2019.3.23
南伊豆の一番大きな川、青野川。
その河口付近にプチレストランTime(以下、Time)はある。

二級河川青野川。4月は川沿い一面にソメイヨシノが花開く

1階がTime。イタリアン料理のお店だ。昔はスナックだったらしい

店内。Timeのお客さんは子育て世代のママさんグループや、仕事のお昼休憩で立ち寄った人、年配の人たちがお茶会をやっていたり、客層はさまざま
海水浴シーズンは観光客も多いそう。
でも、何となくだけど、地元の人が気軽に足を運んでいる印象だ。

こちらが日替わりランチメニュー(日曜日のぞく)。パスタとステーキ・ハンバーグなどから選べる。セットは、サラダとスープとコーヒー付きで1,100円。(コーヒーはお代わり自由!)

「チキンと野菜のペペロンチーノ」。旬の野菜(この日はブロッコリー、プチベールなど)が取り入れてあった。季節ごとに盛り付けを工夫しているそう

「オムレツと牛タンシチュ」。じっくり煮込んだ濃厚デミグラスソースとオムレツが最高に合う!お店の人気メニュー!

「チキングリルとキノコソース」。時間をかけて揚げたお肉は、肉厚。外はカリッ、中は柔らかくてジューシー!
ご覧の通り。
料理はどれも、なんていうか繊細。
色合いも鮮やかで、仕事が細かいなぁと思った。
何よりおいしい! 地元の人たちがよく集まるわけだ。
ディナーメニューも充実している。
(ピザや、オムレツ、ビーフシチューなど、いろんな料理が食べられる。)
どんな人が作っているんだろうと思って厨房をのぞくと・・・

(!)
ちょっとこわそうな(失礼承知の上)な人が淡々と料理を作っている。
・
・
・
「マスターって喋ったらどんな人なんだろう?」
僕は、だんだん興味を持ち(料理とのギャップにもやられ)、お店に通うように。
インタビューは断られるかもしれないと思ったけれど、ありがたいことにマスターは二つ返事で「いいよ」と快諾してくれた。

Timeのマスター、土屋貴さん。「よろしくお願いします!」と僕が言うと「そんなに怖がらなくていいよ」と優しく言ってくれた(僕はまだ内心ビビっていたけど)。土屋さんの趣味は、いろんなお店を食べ歩いて客層を見ることとゴルフ。
■東京で1人暮らしをしたかったんだよ(笑)
南伊豆新聞:「土屋さんは南伊豆の出身なんですか?」
土屋さん:「俺は19歳までこの町で過ごしたよ。高校卒業後は地元の会社に就職したんだけど、色々あって1年も経たないうちに退職したんだよね」
南伊豆新聞:「それからはどんな道を?」
土屋さん:「南伊豆を離れて東京で働いたよ。友達が東京に出ていたし、遊びに行くような感じでね(笑)」

高校時代のお写真(白いタンクトップが土屋さん)。やっぱりこわいよ土屋さん!
南伊豆新聞:「南伊豆を離れた理由はなんだったんですか?」
土屋さん:「東京で1人暮らしをしたかったんだ(笑)。仕事して、東京で遊びながら生活しようかなと思って」
南伊豆新聞:「お、親御さんはなんと?」
土屋さん:「まぁ、すぐに帰ってくると思っていたんじゃないかな」

土屋さん:「どうせ言うこと聞かないだろうってね(笑)。そん時のこと?もう忘れちゃったね」
南伊豆新聞:「料理人になる野望があったわけではないんですね」
土屋さん:「そう。まさかこんな仕事をするとは思わなかった。うんと若い時から目指したわけじゃないんだよね。19歳の時はそういうつもりじゃなかった。でもさ、こういう仕事って食いっぱぐれがないから。やってみたら料理を作るのが面白くなって、いろんなお店を渡り歩いたよ。一番長くいたのは池袋。サンシャインシティに10年くらい働いたね」

土屋さんが20代の頃のお写真。か、かっこいい!!!
■ずっと南伊豆に帰ろうと思っていたよ
土屋さんが30歳の時(1988年)、結婚とお子さんの誕生を機に南伊豆へ戻ってきた。
土屋さん:「俺は最初から南伊豆に帰るつもりで東京にいたから。『いつか戻ってこよう』って、いつも思ってたよ。知ってる人もいるし、ここは居心地がいいんだ。お盆と正月は毎年帰ってたしね。でも一番はやっぱり子どもだね。都会じゃなくて田舎で育てたいと思っていたからさ」
それから土屋さんは、南伊豆のゴルフ場に隣接するレストランに就職。料理長を務めた。
土屋さん:「昔からゴルフが好きだったからね。タダでゴルフできるし、料理も好きだったし、いいなと思ったんだよ(笑)」

ゴルフは池袋で働いていた時に先輩から教えてもらったそう
それから、15年が経った2004年8月8日。Timeをオープンした
土屋さん:「もうちょっと小さくお店をやるつもりだったけど、いざオープンしたらたくさんお客さんが来てくれてね」
南伊豆新聞:「じゃあ、お店の名前の“プチ”レストランって・・・小さくお店をやる予定だったから“プチ”なんですか?」

土屋さん:「そう。あそこの奥の席はもともとなかったんだよね。人が増えたから広げたんだ」
南伊豆新聞:「へぇー」
2004年からお店を始めて、15年か。
アルバイトさんのサポートがあるとはいえ、土屋さんは1人で料理を作っている。
きっと色々な物語が詰まっているんだろうな。

Timeの由来は、「時間」って意味と料理に使われるハーブ「Thyme(タイム)」からもじったそう。よく見ると、時計のロゴに葉っぱのデザインがあしらわれている。ちなみにThymeの意味を勝手に調べたら、気品のある清々しい香りとほろ苦さという意味だった
土屋さん:「簡単なことじゃないですよ。来てくれた人を裏切れない。それに応えなきゃいけないって」

土屋さん:「バイトの子らもまかないの時間になると、おいしいものを期待しているもんだからさ。そういうのを裏切れないから。ね?まじめなんだよ(笑)」
土屋さん:「今は年齢的にまだ大丈夫だけど、ゆくゆくは今の追われっ放しの生活じゃなくて、もうちょっと余裕をもって仕事したいなって思ってる。例えば、予約だけにするとかさ。コース料理とか、もっとこう生意気だけど、クオリティを上げてさ」

土屋さん:「しばらくは今の営業スタイルでやるけどね」
■変えることってできないじゃん
南伊豆新聞:「Timeには若い人から年配の人まで、いろんな客層の人が来ますよね。地元の人から愛されるお店ってどうやってつくるんですか?」

土屋さん:「ハハっ。愛されてるかどうかは俺もわからないけどね(笑)。『また来て欲しい』っていう気持ちだよ。自分があんまりやる気ない時って、なぜかお客さんって来ないんだよね。あれが不思議なんだ。あとは『自分がおいしいと思ったものを出す』。そこは気をつけているかな。もし『おいしくない』って言われても、俺がおいしいって思うんだからさ(笑)。それって変えることができないじゃん
なんか・・・いろいろなことに通じる話を聞いてしまった。
土屋さんは19歳の時に料理を作る楽しさに目覚めた。
東京に行かなかったら、どうなっていたんだろう。

土屋さん:「そのまま就職していたらこういう仕事をしていないと思う。人生ってわかんないもんだよね」
南伊豆新聞:「ほんとに・・・そうですね。では、そろそろ取材を終えようと思ってます。ありがとうございました!」
土屋さん:「楽しかった?」
南伊豆新聞:「へ?」
土屋さん:「俺はこの取材すごく楽しかったけど、イッテツくんは楽しかった?」
南伊豆新聞:「も、もちろんっす(笑)」
土屋さん:「よかった。楽しかったって思って欲しかったらさ。お酒強そうだね、今度飲みにきなよ」

Timeはワインも置いてある(焼酎もある)。料理に合わせてどうぞ!

ちなみに土屋さんはお酒が全く飲めないらしい。意外!
・
・
・
土屋さん、お世辞でなく、本当に楽しかったです。
気さくで話しやすくて、優しい人でした。
あぁ。お話が聞けてよかった。
ぜひTime(土屋さん)の料理を食べに来てください。
【プチレストランTime】
場所:415-0152 静岡県賀茂郡南伊豆町湊403-1
電話:0558-62-5111
営業時間:11:00~14:30(13:45ラストオーダー)/17:30~22:30( 21:45ラストオーダー)
定休日:水曜日
※「南伊豆新聞を見たよ!」と伝えてくれると嬉しいです!
