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「地元の人とか移住者とか俺にはあんまり関係ない(笑)。横のつながりができる場所になれば」。 一度は閉園したけど、いつの間にか無料開園。「下賀茂熱帯植物園」

南伊豆町、下賀茂商店街にひときわ目をひく場所がある。

それが、下賀茂熱帯植物園だ。

ワシントンヤシの木の存在感!

ワシントンヤシの木の存在感!

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中に入ろうと思って入り口を見ると、、、

入園無料の衝撃

入園無料!

館内に入ると・・・。

カフェ?

吹き抜けのスペースが広がっていた。こちらは喫茶スペース

「いらっしゃい!どうぞどうぞ〜」

丁寧ながらも陽気なノリで話しかけてくれたのは、三代続く植物園のPR担当、安藤広和さん。

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facebookのプロフィールから拝借。「気さくな方」とは、安藤さんみたいな人をいうのか

facebookのプロフィールから拝借。「気さくな方」とは、安藤さんみたいな人をいうのか

今回は3代目の広和さんに焦点を当てて、お話を伺った。

 

「じゃあ、もう無料で!」ってことにしたんです

ここは入園無料の熱帯植物園です。主に植物の販売レンタル業と喫茶スペース。あとはスペース貸しが中心です。今はここでライブをやったり、フリーマーケットをやったりしています。

落語会の様子

夏と冬に開催された落語会の様子

南伊豆を中心に活動しているミュージシャンによる音楽ライブの様子(tengusa)

夏に開催した音楽ライブの様子(下賀茂熱帯植物園×tengusa)

この他にも、高校の創立70周年パーティーや、小学生の父母会の打ち上げ場所にもなったりしている。

ここは、Wi-Fiも完備。コワーキングスペースも受け入れているそうだ。

「植物園」っていう枠組みを超えている・・・。

-この熱帯植物園ができるまでの経緯を聞かせてください。

始まりは俺の祖父からです。もともと祖父は東京生まれなのですが、学生時代に南伊豆へ来たとき、温泉と温室栽培に目をつけたんです。それから祖父は学業をやりながら、ここで温室メロン栽培を始めました。

広和さんの父、2代目園長の和泉さんが出てきた。

インタビュー中、広和さんの父、2代目園長の和泉さんが登場

和泉さん:ですが、学生との両立は難しかったようです。父は東京農大を中退して本格的に南伊豆に移住して温室メロン栽培を始めました。1932年のことです。その後は戦争で南方に向かうことになり、園芸の経営を途中断念したんです。それから終戦(1945年)を機にもう一度ここへ戻ってきたというわけです。

祖父の広さん。「親父(2代目)と俺は南伊豆で生まれました」

初代の園長、安藤広さん。

戻ってきた広さんは、切り花や鉢花の栽培事業を起こし、園芸業を再開した。

-この熱帯植物はどうやって広がったんですか?

広和さん:祖父が若い頃、趣味が海外に行くことでした。そこで苗木を持ち帰って植えたそうです。当時は飛行機で苗木を持ってこれたらしくて(笑)。

和泉さん:戦地で見た熱帯植物が魅力的だったとも言っていましたね。

こちらが植物園(写真は一部)。現在は合計〇〇種類の熱帯植物が植えてある。11月から4月までは温泉熱のおかげで温暖な気候が維持される。常時●℃。

こちらが植物園(写真は一部)。現在は100種類以上の熱帯植物が植えてある。11月から4月までは温泉熱のおかげで温暖な気候が維持される。

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上を見上げるとブーゲンビリアの花が

中に入ると、メガネが曇った!

温泉熱でメガネが曇った!

顔出しパネル。これも広さんが作らせたのだとか。「顔パネルの先駆けですよ」と広和さん。石で彫ってある!!!!クオリティがすごい。

顔出しパネル。これも広さんが作らせたのだとか。「顔パネルの先駆けですよ」と広和さん。木を彫ってできたもの!!!!クオリティがすごい。

正式に植物園として開園したのは、昭和37年の1月。

開園当初の写真。伊豆急線が昭和36年12月に下田駅まで通り、植物園はそれに合わせて開園したそう。当時はここでは珍しい洋食メニューがあった。東京から住み込みでシェフを呼んでいたらしい。今も下田のご老人が来ると、『昔はここにビーフシチューを食べにきた』と教えてくれるらしい

開園当初(昭和41年)の写真。昭和36年12月、南伊豆の最寄り駅「下田駅」の開通に合わせて開園した。当時はここでは珍しい洋食メニューがあった。東京から住み込みでシェフを呼んでいたらしい。今も下田のご老人が来ると、『昔はここにビーフシチューを食べにきた』と教えてくれるらしい

最初は無料で始めていたけど、時代はバブル。
植物園にあるレストランは、毎週列ができるほど人が来たらしい。

制服でお出迎え。年齢によって、身につける制服も違ったそうだ

以前は女性スタッフは制服があった

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大盛況だったレストラン。ポリネシア料理が人気だったそう

広和さん:バス会社が「この植物園を観光コースに入れたいから有料にしてくれ」と頼まれてね。祖父たちは『何度でも来てもらいたいから』と50円からスタートしたそうです。今から50年以上前の話だね。

50円!!!

50円!!!

広和さん:でも、4年前(2014年)から観光の波が厳しくなって。最後は500円まで値上げしました。だんだん従業員も抱えきれなくなったので観光から撤退して、植木販売と喫茶スペースだけにしたんです。

新聞やテレビにも「閉園します」ってお知らせをしたんですよ。でも、それからしばらくして「30年ぶりに植物園に来たよ」と言ってくる人もいて。情報が届いてない人がいたんです(笑)

広和さん「新聞やテレビにも「閉園します」ってお知らせをしたんですよ。でも、それからしばらくして「30年ぶりに植物園に来たよ」と言ってくる人もいてね」

広和さん:追い返すのも悪い気がして。だから、『散らかってるけど、どうぞ』って形で植物園を案内したんです。そしたら噂が広がってまた人が来るようになって。一回閉めるって言っちゃったし、『じゃあもう無料で!』ってことにしました。

もう無料で!って

もう無料で!って

えぇぇー(ゆるい)!!!!そんな経緯が。。

※和泉さんは仕事に戻られていった。

南伊豆の景色だけじゃ、もうお客さんって来ないんじゃないかなって思うんですよ

-話は変わるのですが、広和さんは、そもそも植物は好きだったんですか?

いや、そんなに好きでもなかった(笑)。でも、小さい頃から夏休みとか手伝いをやらされてたわけ。ほんとは体育の先生になりたかったんです。

広和さんは軟式テニスで静岡県大会で優勝。インターハイ経験もある

広和さんは軟式テニスで静岡県大会で優勝。インターハイに出場経験もある

「でも家の家系的に『絶対に農大は受けろ』と言われて。特に祖父からね。だから一つだけ農大を受けて体育大を3つ受けたんです。でも、体育大は全部落ちて、なぜか農大が補欠合格・・・」

農大受験は「こんなとこ来ねぇし」って思ってリラックスして受けたんだよね(笑)。俺の親父も農大だし、結局三代続いて農大です。

農大受験は「こんなとこ来ねぇし」って思ってリラックスして受けたんだよね(笑)。俺の親父も農大だし、結局三代続いて農大です

はぁぁ。

僕は、安易な言葉だけど・・・そういうご縁というか、運命だったのかなと思ってしまった。

「でもね、農大に行ったけど、ほとんど学んだ記憶はないですね(笑)。先輩に勧められて大学2年の時から造園会社でアルバイトをやりました。庭の木を切ったり、掃除したり、JR蒲田駅の花壇を管理したり。大学を卒業してからも、そのバイトをやっていました」

当時の大学時代の写真が出てきた。軟式テニスサークルだったそう。「東京生活は楽しすぎたね」と笑う

大学時代の写真が出てきた。軟式テニスサークルだったそう。「東京生活は楽しすぎたね」と広和さん

「その頃、植物園を管理していた叔父から「一人で営業をしていて人手が足りない。お前は園芸より喋る方が向いているから、営業を手伝ってくれって。すこしやってくれたら、また東京に帰ってもいいから」と言われて戻って来たんです。そしたら俺が来て半年でここが火事になったんだよね」

12月29日明け方。ちょうどこの場所は木造のレストラン。奥の植物は無事だった。「お客さんもまだ多かったし、3月20日をめどに作り直す事になってさ。でも、改築にべらぼうに金額がかかって。

1992年12月29日明け方。ちょうどこの場所は木造のレストラン。奥の植物は無事だった。「お客さんもまだ多かったし、3月20日をめどに作り直すことになってさ。でも、改築にべらぼうに金額がかかって・・・」

「片付けをしながら、『もうこっちでやるしかない』って思ったんです」。

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それから安藤さんは腹を決めた。
地元の消防団や商工会青年部などに入り、徐々に地元に関わっていった。

例えば、南伊豆の温泉街の旅館の跡取りたちと交流会を企画したり、2月に行われる桜祭りの企画や、マラソン大会などの誘致サポートをしたり。広和さんなりに、横のつながりをつくっていこうと奮闘した。

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安藤さんが主導で、東日本大震災のチャリティイベントもしている

熱帯植物園では安藤さんが主導で東日本大震災のチャリティイベントもしている。2012年から南伊豆の桜(河津桜)を福島で植えるプロジェクトだ。今年で7年目。

2012年から南伊豆の桜(河津桜)を福島で植えるプロジェクト。今年で7年目。

今は熱帯植物を観るだけではなく、イベント会場としても機能しているんだな。

「最近は移住の人が増えているんだけど、移住した人たち同士が集まれる場所は少ない。ここでコミニティーをつくってもらいたいですね」。

-なんか、いい感じでお節介なんですね。兄貴肌というか(笑)。

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俺がこっちに戻ってきたとき、周りからよくしてもらったんですよ。だから、俺もそうありたいな、と

よく言われます(笑)。移住者の方からも「僕ら(移住者)がやっているイベントに、よく顔を出してくれますよね」って(笑)。俺の中では地元の人だとか移住者とか関係ないから。頼ってくれたら『じゃあ一緒にやろうよ』って言える立場でありたいな、と」

猫が急にきた

猫が急にきた

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いやぁーすいませんと安藤さん。しばらく猫と遊んだ

「すいません、このまま続けますね(笑)。植物園をイベントスペースとして貸し出したのは今年(2018年)からなんです。だからこれからこの場所をどんどん売っていきたいです。例えば毎週ここに人が集まるような形が取れたらいいですね。商店街だけど、ここは人が集まる所が少ないから」。

今年(2018年)はここで20回ほどイベントが開催された

今年(2018年)は20回ほどイベントが開催された

最後に、安藤さんはこう言った。

「南伊豆の景色だけじゃ、もうお客さんって来ないんじゃないかなって思うんですよ。人が絡んでこないと。面白い人がいて、『あそこに行けばあの人がいるから行ってみたらいいよ』って所が増えていけばいい。だけど、こっちの人間(南伊豆に住んでいる人)で横のつながりができてないと「他に行くとこ?知らない、わからない」じゃね。みんなが案内人になっていけば、立ち寄る場所がもっと増えていくと思うな」。

お話を聞いて。

南伊豆の観光の変化を、三代にわたって経験している下賀茂熱帯植物園。

安藤さんたちは、どうやったらこの町と植物園がもう一度盛り上がるのか、ずっと試行錯誤をしている。

「自分のお店だけが盛り上がればいい」という雰囲気は全く感じられなかった。

その後もあれもやって見たい、これをやってみたい。安藤さんの話は止まらない

その後も、「あれもやってみたい」「これをやってみたい」。安藤さんの話は止まらない

頼りにしてます広和さん。
若い世代と上の世代をつなぐ、やわらかな考えを持った、頼れる兄貴でいて欲しい。
そんなことを思いました。

【下賀茂熱帯植物園】
場所: 415-0303 静岡県賀茂郡南伊豆町下賀茂255
電話:0558-62-0057
営業時間:9:30~15:00
定休日:水曜 ※祝日・年末年始・ゴールデンウィーク・みなみの桜と菜の花まつり期間(2/10~3/10)は、営業しています。
※「南伊豆新聞を見たよ!」と伝えてくれると嬉しいです!

下賀茂熱帯植物園

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